鉱物標本 合成石 電子回路設計のお店 シーサーズ・ラボ
某照明メーカーに技術者として勤める、 同期メンバーで立ち上げたモノづくりチームです。 日夜、おもしろ商品の開発を行っています。現在はラボ長が脱サラし、個人事業として運営しています。
ブルーアイスの正体を追え!!!
意外と長編なので、前編と後編で分けます!
さて、まずブルーアイスとの出会いですが、
2023後半、ミネラルマルシェで出展していた、知り合いの業者が持ってきてくれました。
「ラボさん!こういうの好きでしょ?スラグらしいよ!!!」
彼が言うには、2023年のツーソンショーで見つけたそうです。
その際、仕入れ元がくれたメモも見せてくれました。
英語で書かれたメモにはこのように書いてありました。
「ブルーアイス スラグ
βアルミナ、バナジウムを含むスラグ。
インドネシアのスマトラで、2~3メートルの地中から見つかった。
硬度は7~8である。
形成当初は3000℃以上であり、長い間砂に埋もれていた。
これは研究所等では作れない。」
まあ、いろいろツッコミたいと所はあったものの、
合成やガラスを天然石と言うことはあれど、ちゃんと人工物だよ!と言うのは珍しい。
きっと本当にスラグなんだろうな。と思いました。まあ、見た目も人工物っぽいですし。
さて、しばらくして、このブルーアイスが少しずつ市場に出回るようになってきました。
すると、本品は「中宇利石(ナカウライト)」という天然石だよ!
と言うお店が出てきました。
中宇利石は日本産鉱物で、空色の針状結晶として産出します。
がっつり人工物だと思っていた私は
いやー、天然石ではないんじゃない?しかし、見た目でとか、根拠がないのはよくないな。
そうだ!せっかくの機会なので、成分分析とか依頼してみよう!
一度やってみたかったんだよね!
といったノリで、本品をガッツリ調べることにしました。
●まずは宝石の鑑別機関へ
一応ルースだったので、まずは宝石の鑑別機関にソーティングを依頼してみました。
しかし、残念ながら鑑別不可となってしまいました。
理由は鬆(す)が多いから。「鬆」とは、本来物質が詰まっているはずのところに出来た穴です。
ようは検査中に割れてしまう可能性があるから、鑑別できませんね。ってことです。
天然石でもヒビやカケが酷いものは鑑別を断られます。
●じゃあ次は蛍光X線分析だ!
次に思いつくのはこれです。
ソーティングとかでも成分分析する時は、これですからね!
仕組みですが、試験体にX線を当てて、出てきた蛍光X線を観測。
これは原子特有なものになるので、そこから成分が分かる訳です。
今は個人でもお金さえ払えば、分析を依頼できるんで、便利ですよね!!
宝石の鑑別機関で断れてしまったので、鉱物標本屋さんで分析してくれる所に依頼しました。
測定費用は一点で7700円なり。ブルーアイスは白い部分と青い部分があるので、2点依頼しました。
これではこれで15400円です。すでに、ブルーアイスを全部売った際の利益を超えました(笑)
下記がその結果です。まずは白い部分。
続いて、青い部分。
分析結果から見て分かる通り、白い分、青い部分共に、アルミニウムが主成分のようです。
青い部分は白い分よりも重金属が多いようですね。
さて、中宇利石の化学式は
(Mn,Ni,Cu) 8 (SO 4) 4 (CO 3 ) (OH) 6 ・48H 2 Oとされており、
アルミニウムが主成分となるブルーアイスはこれではないことは分かりました。
でもMnやNiを含み、かつ青い鉱物ということで、この辺りから中宇利石という文言が出てきたようにも思えますね。
じゃあ、これは一体なんなのさ?って事ですが。
・・・
正直これ以上分からない!!!!
質量とモル数から、なんとなく化学式は立てられそうですが、
そうすると、数%しか含まないZnとかZrとかは入れるのか?
入れたらアルミニウムの数が相当多くなる。。
しかもけっこう致命的だと思うのは、
蛍光X線分析は軽元素は検出できない!
ってことです。軽元素とは、分野によって範囲がちょっと異なるようですが、
ようは軽い元素です。先ほどの分析結果にも左上に 「分析範囲」 という記載があって
Na~Uまでとなっています。つまり、Naより軽い元素が検出されません。
周期表を調べてもらうと分かりますが、
そうするとOとかCとか、鉱物標本の構成にけっこう頻繁にでてくる元素が検出できないことになります。
つまり、未知のものを蛍光X線分析する場合、結果から正体を導く為の、豊富な経験、知識が必要だということです!
当然、私にそんなものはないので、ここで手詰まりとなりました。
続きます!